やたらに、ゆとり。

しれっと徒然なるままに書く人。

ツレヅレなるままに⑪ よんきゅっぱはごせんえん


算数が苦手です。

 

数学とかじゃなく、算数が。


小学校のころに習う算数は、生きていくうえで欠かせない数字という概念を理解するにあたってとても重要な段階でしょう。


足し算、引き算、掛け算、割り算。
時計の見方、お金の数え方。


その「さんすう」にどれほど苦しめられたか。

 

 

 

それは、小学校1年生の誕生日。


誕生日には毎年家族みんなで、「カーニバルプラザ」というバイキングのお店に行っていた。

 

ほくほくのクルトンたっぷりじゃがいものポタージュ
ヤングコーンとレタスとパプリカのシーザーサラダ
ほんのり甘くきりりと塩のきいたクラッカー
テーブルいっぱいに盛られた蟹、カニ、かに

 

いつもの食卓には乗らない色鮮やかな料理に目をくらませていると。
突如、店内の電気が消えた。真っ暗である。
なんやなんや、と暗がりを見わたしていると、ある一点にスポットライトが当たる。


なんとそこには、ライトに照らされピカピカと艶めくの金管楽器を掲げた、ブラスバンドがいるではないか!

 

ええ!
さっきはいなかったのに!!
すごーい!!!

 

と、感動していると。
列の真ん中のきれいなお姉さんが、こう言ったのだ。


「皆さんご注目! 今日、5歳の誕生日を迎えるワンダフルなガールが、ここ、カーニバルプラザにやってきています!! ヒュー!!!」

 

 

へえー!
私と一緒の誕生日だ!!
ワンダフル!!!

 

と、興奮していると。
急にパアッと。
なんと、この私がスポットライトに照らされているではないか!

 


私と同じ誕生日のワンダフルなガールの正体。
それは私自身だったのだ!

 

 

ちゃんちゃん。

 

こんな、あほエピソードはここまでにして。


楽園のようなカーニバルプラザに、行きたくて、行きたくて行きたくてならなかったのだ。
小学生になって初めての誕生日に、うきうきわくわくしていた。

 

今日は何を食べよう、甘じょっぱいクラッカー今年もあるかな。

(食事中のお菓子類に目がない、居酒屋のえびせんとか)

 

あいにくの平日だが、文句は言わない。
だって、私は今日、ひとつ大人になるんやもん。

 

 

今でも、鮮明に思い出せます。
その日の宿題。

 

 


さんすうの宿題。


B4用紙にぎっっっっっっっっっっしりと。


2ケタと2ケタの引き算問題。

 

 

 

泣きました。
足し算はかろうじて出来ていました。
引き算はてんでダメ。

母は勉強にとても厳しかった。
そんな母の鬼のひとこと。

 

 

宿題終わらせへんかったら、カーニバルプラザ行かへんで??

 

 

泣きました。
泣きながら、延々と続く2ケタの引き算を解き続けました。
どれぐらいの間そうしていたかは定かではありませんが、この時間は一生続くのだ、と絶望し、悟りそうになっていたことはよーく覚えています。

 

まあ、永遠に終わらない宿題はない。

これ迷(名)言。


結局、何時間か予約をずらして、カーニバルプラザに行くことはできました。

6歳になって初めての蟹の味は、なんとも言えないものでした。

 

 

そんなこんなで、算数苦手意識はぐんぐん育ち、今も算数が苦手です。

高校3年生ぐらいまで、消費税を考慮して買い物をすることができませんでした。(ばかすぎる)
例えば、4,980円のものを買うとして。
5,000円として計算するのが普通だと思います。
それでも私は、4,000円として認識し計算してしまうのです。
予算オーバーは常。

 

何でしょうね、数字の感覚がない、というか。
歴史の教科書で、ふいに「1865年」とか年代が現れると、びっくりしてしまいます。
「せんはっぴゃくろくじゅうごねん」と読めない。
数字を文字として認識していないのかな。

 

九九は好きでした。
ただ、仕組みを理解していたのでなく、音やリズムで覚えていたような。
私にとって、歌と同じ部類だったのかもしれません。


心配になるほど、何かが欠如したまま大人になってしまった。


でも、何とか難なく、んー若干の難はあれど。
今、生きていられているし、なんかもういいかなって!

買い物で予算オーバーしなくなっただけ、成長感じ、大変満足している次第であります。

 

 

村田沙耶香さんの『となりの脳世界』を読んで、唐突に書きたくなったお話でした。


ちゃんちゃん。