読書感想文① 森見登美彦『熱帯』
余談ですが、
小中高、と電車通学だった私には変な癖があります。
電車に乗っている人の素性を、無差別に想像してしまうのです。
年齢、職業、居住地、配偶者の有無 and so on.
この癖がはじまったきっかけの記憶は皆無ですが、癖ってそういうものだから、まあいいですよね!
6:32発の電車で会社に向かうなんて、奥さん弁当大変だなあ。
万年マスク、この女の人。顔の下半分はどんなだろう?
このおっさん、指揮棒似合うだろうな〜、いや、演奏者側っぽい、ホルンとか。
電車で写経……?! 何の仕事してるのこの人?!
待って待ってこの人、乗る駅も降りる駅も一緒なんやけど、ご近所さん? どの辺? 何丁目?
タチ悪いのが、これの逆もありまして。
この先生、電車乗ったら絶対普通のおっさん。
このお医者さん、電車乗ったら絶対普通のおっさん。
この……
やめておきます。
森見登美彦『熱帯』。
森見さんのことだから、きっとジャンルはミステリーなんだが、一概に「ミステリー」と言えないのが、この『熱帯』の最大の特徴であり、魅力だと思う。
『熱帯』のジャンルは、それこそ『熱帯』としか言えないんだよなあ。
森見さんのことだから、とか馴れ馴れしく打ちましたが、実は森見作品、『熱帯』が初見。
『夜は短し歩けよ乙女』旋風のころ、たぶん私は有川浩の沼に嵌っていたはず。
有川浩、後々語りたいなあ。
後々ね。
さて、この『熱帯』、どんな話ー?って聞いたら終わりよ?
『熱帯』はだいぶ曲者。
どんな話ー?
汝にかかわりなきことを語るなかれしからずんば汝は好まざることを聞くならん
……は? 呪文?
汝にかかわりなきことを語るなかれしからずんば汝は好まざることを聞くならん
…………は?
これ、パターン①。
つぎ、パターン②。
どんな話ー?
まずね、この話は『千一夜物語』が根底にありまして、『千一夜物語』読まれました? え! 読まれていらっしゃらない! まあ、まあ内容把握にはまっっったく支障はございません、むしろ謎が十重二十重と深まって、『熱帯』に引き込まれてしまわれることでしょう、かくいう私も『熱帯』に引き込まれておりまして、ええ、現在進行形でございます、この世界の全てが『熱帯』へと繋がっているのです、この世界こそが『熱帯』なのです、ウェルカムトゥーザ『熱帯』っ!☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
……(撤収)
つまりですね。
『熱帯』は実に語りにくい。
謎を大切にしたいがために、謎が謎を呼んで、良いあんばいまで話そうとしても、あれ? どこからが良いあんばいで、どこからがネタバレだ? と自ら謎に誘われるか、
良いあんばいなど、とうに忘れて、徹頭徹尾ネタバレ語りモード突入か、
どちらかになってしまいますね。私は。
そんな謎謎謎な『熱帯』で、しっくりときた言葉。
「物語的思考」
自身が物語の主人公、までは行かなくても、身の回りの事象を「物語的」に「思考」してしまうことを意味する。
なんだか私の「乗客素性妄想癖」が崇高なものになった気がしませんか!
そうそう、たまたま乗り合わせた人間に運命を嗅ぎ、見えずとも纏う「物語」を「思考」しているのですよ。
妄想なんてとんでもない。
けしからん。ぷんぷん。
総じてもいいですか。
はい。総じます。
『熱帯』の読書感想文、むっず〜〜!!!
本屋大賞ノミネートされています、是非読んでください。
そして是非、読書感想文書いてみてください。
間違えた、書いて見せてください。(懇願)