読書感想文② 乙一『暗いところで待ち合わせ』
素敵なハッシュタグを見かけました。
#雪という文字を使わずに雪が降るを文学的に表現してみろ
「〜を使わずに」
制限があると燃えちゃいますね。
煽られると燃えちゃいますね。
私的ベストオブ「#雪という文字を使わずに雪が降るを文学的に表現してみろ」↓
こんなゆるい日本語の配列ってある?
「めちゃ白」語呂が良すぎる。
「フワフワ」がカタカナなのも、刺さる。
「太郎」の存在の申し訳なさ感も。
そもそも「文学的に表現」て何? と思わせんばかりのゆるさ。
あーたまらん。
乙一『暗いところで待ち合わせ』。
貸出中のため、写真はネットから引っ貼りました。失敬。
『暗いところで待ち合わせ』の何が良いかって、まず装丁。
緑がかった黒の背景に、性別が見て取れない人間のような生き物が意味深な仕草。
縦に、神妙なフォントのタイトル。
クライトコロデマチアワセ……
ホラーやん?
ところがしかし、『暗いところで待ち合わせ』、ホラーではありません。
いや、実際ね、乙一先生、グロとかホラーがお得意でいらっしゃいます。
ただのホラーではない。
ホラーに「何か」が丁寧に織り込まれているのが、乙一。
「何か」が何なのかは、その作品ごとの綿密な設定によりけり。
私は、そう理解しています。
特に、『夏と花火と私の死体』は、後々語り案件。
本の話をすると本の話をしたくなるな。
ネタ切れの心配ご無用なのでは。ひっひっひ。
……脱線警報。
『暗いところで待ち合わせ』の主人公は、後天的に盲目になってしまったひとりの女性。
ここで一つスッキリですね。
タイトルの「暗いところ」とは、この女性の「視る」暗闇の世界。
視力0.01の私も理解し得ない「暗いところ」で「待ち合わせ」とな。
瞼を閉じて、想像。
いま、この瞬間にあなたはすべての視力を失いました。
あなたがいるのは、あるアパートの一室。
どこまでも闇の空間。
頼りは、自身の触覚、聴覚、強力な光にのみ僅かに反応する網膜。
この部屋にはあなた一人しかいません。
しかし、いまあなたは、あなたの知らないうちに、あなたの知らない人と「待ち合わせ」しています。
その「待ち合わせ」相手は、
2日前に起きた轢殺事件の殺人容疑者。
やはり、ホラーやん?
いやいや、それがな、なんとなんとホラーちゃいますねん。読んだらわかる読んだらわかる。
内容はこれ以上触れないことにします。
『暗いところで待ち合わせ』の何が良いかって、描写の繊細さと温度感。
暗闇にいるはずの女性「視点」の描写が、どこか、あたたかい。
読後、「暗闇」=「冷たい」が自分の中で固定概念化されていたんだと初めて知ったし、それはふわりと覆されていたんだよなあ〜〜。
その感覚が一回限りなのが、惜しい。
もう一回!てわけにはいかないんですな。
もう一回!するためにはどっかの角に頭ぶっつけるか、死なないぐらいの階段から落ちるかして記憶飛ばさにゃぁならん。
この感覚を体験するためだけにでも、もう是非、是非是非読んでいただきたい!
ん、ちょっと待って。誰も急かしてないだろうけど、待って?
私がここまでぽちぽち打ったことによって、これから読む方々の楽しみ、減ってしまっていないか?!
私がここまでぽちぽち打ってきたことって、私が一番嫌いな映画宣伝の決まり文句「ラスト12分、あなたは裏切られる……!!」と同じようなことではないか?!
まあ、いい。
これ、書く練習だもん。
さて、乙一先生の『暗いところで待ち合わせ』。
語り尽くそうとすればするほど、ネタバレ必至なので、そろそろお開きです。
やはり、『暗いところで待ち合わせ』の良いところは装丁だと思うな。
ぜーーーーーーんぶ読んだ後に、もう一度、いや二、三度、装丁まじまじと見たもん。
なんでこの装丁にしたのか、謎のままやん?
ってね。
5,6回読んだこの本。
緑がかった黒の背景に、性別が見て取れない人間のような生き物が意味深な仕草。
縦に、神妙なフォントのタイトル。
装丁と内容の関係を見出せずにいる、いまも。
読破して見出せた方はこっそりと教えていただきたいです。
私はそれを言いふらして、さも自身の考察の結果のごとくイキることでしょう。へっへっへ。
寒さ極まる日が続きますね。
大阪では今週金曜日、ぐっと底冷えするそうです。最低気温1℃とな。
あー、めちゃ白フワフワ太郎降らんかなー。